こんにちは。大阪府の寝屋川市で不動産オーナーを支援している税理士の平川(@asse_t_ax)です。
「法人で所有する不動産」を売却しようとすると、「売主側」では譲渡益に対して約35%の法人税がかかります。
一方、「買主側」では不動産取得税や登録免許税などのコストを負担しなければなりません。
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売却する不動産が、取得からある程度の年数が経っており、簿価が低ければ、譲渡益の金額が大きくなってしまいます。
そうした場合には、不動産を売却するのではなく、「法人の株式を譲渡」することを検討してみましょう。
法人が不動産の売却をするときに、売却時の簿価が小さく、多額の売却益が発生するようなケースでは有効な方法になります。
譲渡益に課税されるのは法人税だけではない?
「不動産を譲渡した場合の税金」について、下記の法人(X社)を例に計算してみましょう。
わかりやすくするために、不動産の「簿価」を0、「時価」を1,000万円とします。
不動産を時価の1,000万円で売却した場合の譲渡益は1,000万円になりますので、法人税は350万円(実効税率35%で計算)です。
売却後のX社の貸借対照表は下記のとおりです。
税金を納付すると、会社には現金の650万円が残りますね。
この現金は最終的に、オーナーでもある株主に「配当」により渡すことになります。
配当を受けた株主は、受け取った配当金の金額に応じて所得税を納めなければなりません。
配当金に対する税金は、「累進課税」により計算されます。
配当金以外の収入はないものとし、配当金650万円を受け取った場合の税金を、下記の所得税の速算表にしたがって計算してみましょう。
〔算式〕
(6,500,000円×20%)- 427,500円 = 872,500円
※計算を簡便にするため、配当控除は考慮しておりません。
また、買主側でも不動産取得税や登録免許税の負担があり、今回の事例で不動産を売却すると、売却金額の半分以上を税金に持っていかれてしまう計算になります。
【注意】
上記の所得税とは別に、住民税が約10%課されます。
オーナー株式の譲渡で法人ごと売却
「不動産を売却する方法」は、多額の税金負担が必要になりますので、あまり現実的ではありません。
では、「法人の株式を譲渡する方法」によった場合の税金負担はどれくらいになるでしょうか。
「不動産の時価」が1,000万円ですので、「株式の時価」も1,000万円とします。
〔算式〕
10,000,000円 × 15.315% = 1,531,500円
※別途住民税が5%かかります
株式の売却による「譲渡益にかかる所得税」は、他の所得とは分けて課税する「分離課税」により計算するとともに、税率も譲渡益の金額で変動することがなく、「15.315%」で一定になります。
株式を譲渡することによりかかってくる税金は以上です。
また、株式の譲渡であれば、登記の必要もないので、手間もそれほどかからず行うことが可能です。
まとめ
簿価の低い不動産を譲渡してしまう方法だと、半分以上が税金の負担でなくなってしまいます。
であれば、わざわざ不動産を譲渡せず、役員報酬をたくさん払い、資金を個人へ移していくことを考えるべきではないでしょうか。
株式の譲渡により法人ごと売却してしまう方法であれば、税金負担は約20%で済みます。
また、登記などの手間もかからないので、法人で所有している「不動産の簿価が低い」、「法人税の負担が大きい」状況であれば、一度ご検討ください。