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不動産にひも付いた借入金を相続する場合の注意点とは?【残債のある不動産の相続】

 
ひも付き借入金がある場合の注意点
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こんにちは。大阪府の寝屋川市・枚方市を中心に不動産オーナーを支援している税理士の平川(@asse_t_ax)です。

不動産オーナーに相続が発生した場合には、所有する不動産の遺産分割について問題となることがあります。

例えば、オーナーが銀行で融資を受け、物件を購入。その後オーナーに相続が発生した時点で「残債が残っている」ようなケース。

このような物件を相続するときに注意すべきことは、「物件を相続する人」が「物件にひも付いた借入金」も相続するということです。

この前提を無視して遺産分割をすすめてしまうと、相続人が所得税の申告時に不利益な取り扱いを受ける可能性も。。。

 

今回は、「残債のある不動産」を相続するときに、最低限気を付けるべきことについて解説していきたいと思います。

借入金の利子が所得税の必要経費にならないかも

不動産を相続するときに気を付けることは、「不動産にひも付いた借入金」を誰が相続するかということです。

ここを間違えると、相続後の相続人の所得税の計算で不利益な取り扱いを受けてしまいます。

このことを理解するためには、「所得税の必要経費」の定義について知っておく必要があります。

 

必要経費は、『所得税法37条』で規定されており、下記参考ください。

【必要経費】

その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額または雑所得の金額の計算上、「必要経費に算入すべき金額」は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入に係る売上原価、その他総収入金額を得るため直接要した費用の額及びその年分における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用の額とする。

上記のうち、「総収入金額を得るため直接要した費用の額」という部分がとても大事なところです。

言い換えると、「不動産から発生する賃貸料に直接対応する借入金の利子しか必要経費にならないよ」ということになります。

 

【極端な例】として、父が亡くなり、収益マンションを次男が、収益マンションにひも付いた借入金を長男が相続した場合を想定してみましょう。

まずは、収入を兄と弟のどっちで申告するか。

収益マンションは弟が相続しているため、弟の収入として確定申告しなければなりません。

これは「所有者」と「申告する人」が一致しているため問題ないでしょう。

一方、「借入金の利子」はどうか。

結論からいうと、兄と弟のどちらでも計上することができません。

 

借入金の返済は債務者である兄がしているので、弟の所得税の計算で必要経費に算入できず、兄は、借入金とひも付いた収入がないので、そもそも申告する所得がありません。

かりに、兄が他の収益物件を所有しており、不動産所得があったとしても、収入とひも付いた借入金の利子ではないため、必要経費に計上することはできません。

 ベストな遺産分割の方法とは?

さきほど、極端な例をあげて「ひも付きの借入金利子」が必要経費にならない理由について説明してきました。

 

では、残債のある不動産をどのように分割すればいいか?

結論としては、「相続人の状況」や「不動産の時価と残債のバランス」など、総合的に判断する必要があります。

ですので、「一概にこうしてください」とは言えないのですが、基本的な考え方をお伝えしたいと思います。

(1)なるべく共有持分は避ける

これは、残債のある不動産に限らずですが、不動産の名義を共有持分にすると相続が発生するにつれ、共有者が増えていきます。

 

共有者が増えると、

  • 物件の売却時や建物の建築時に共有者全員の同意がいるため面倒。
  • 相続で共有者が多いため遺産分割でもめる。

など、不動産の権利関係が複雑となってしまいます。

 

なお、事業規模の収益不動産を共有で取得すれば、共有者が全員「65万円控除」の適用を受けることができるなどのメリットもあります。

短期的にみたときに、共有者が夫婦や親子など、近しい間柄であればいいのでは?とも考えられますが、相続が発生するにつれ、共有者は増えていき、権利関係が複雑化することが予想されます。

やはり長期的に考えれば、共有名義は避けるべきと考えます。

(2)持分と借入金の負担割合をそろえる

「不動産の相続で共有持分は避けるべき」といいましたが、不動産オーナーの相続は、不動産の割合が多く現預金の割合が少ない、なんてことが普通です。

そのため、相続人ごとの不公平をなくすためには、共有持分により相続することもよくあるのが現実。

その場合には、必ず不動産の持分割合と借入金の負担割合をそろえましょう。

 

たとえば、相続人が3人で、不動産の持分割合を3分の1ずつとするならば、借入金の負担割合も3分の1ずつ相続するといったぐあいです。

不動産とひも付きの借入金との相続割合をそろえることにより、それぞれが負担した借入金の利子を必要経費に算入することが可能になります。

共有持分をさける方法

兄弟の仲が悪い場合やどうしても単独所有で土地を相続したいといった場合はどうしたらよいでしょうか。

 

一つの方法として、「分筆」してからの相続が考えられます。

「分筆」とは、登記簿上で単一の土地を複数に分割して登記し直すことをいいます。

土地を「分筆」してから相続することにより、単独所有による相続が可能となります。

分筆のデメリットとしては、「時間」と「お金」の負担が大きいことです。

📝【分筆の手続きの流れ】

  1. 土地家屋調査士に依頼
  2. 境界確定
  3. 測量
  4. 登記

土地家屋調査士に相談してから、分筆登記が完了するまで、半年近くかかることもあります。

費用に関しては、境界が確定してるかどうかによっても異なりますが、50万から150万円ほど。

分筆を検討している場合には、あらかじめ土地家屋調査士に測量を依頼しておくなど、段取りが大事になります。

その他の注意点

ひも付きの借入金がある不動産を相続する場合の注意点として、所得税の必要経費にならない、ということだけでなく、相続税の計算で「債務控除」を受けることができない、ということがあります。

「債務控除」を受けるためには、今まで述べてきたことと同様に、不動産と借入金の相続割合をそろえることが重要になります。

 

詳細については、下記の記事をご覧ください。

遺産分割で注意すべきこと!債務控除を利用できない事例紹介

まとめ

不動産にひも付いた借入金の利子は、不動産の持分割合に直接対応する部分しか必要経費になりません。

不動産にひも付きの借入金がある場合には、不動産の持分割合と借入金の相続割合を必ずそろえましょう。

また、単独所有を希望するのであれば、「分筆」の方法が考えられますが、時間とお金がかかりますので、相続開始後、そうそうに段取りする必要があります

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