こんにちは。大阪府の寝屋川市・枚方市を中心に不動産オーナーを支援している税理士の平川(@asse_t_ax)です。
不動産所得の収入の計上時期については、非常に間違いが多いところになります。
税務調査でも、「家賃等の収入を計上しているタイミング」は、狙われやすいポイントです。
今回は、「賃貸料(家賃)の収入計上時期」について解説していきたいと思います。
【原則】の計上時期
不動産所得の収入計上時期の一般的な原則は下記のとおりとなります。
📝【不動産所得の一般的な収入計上時期】
- 契約又は慣習により支払日が定められているものについてはその支払日。
- 支払日が定められていない場合で、「請求がある場合」はその請求日。「ない場合」は、実際の支払日。
つまり、不動産所得の収入計上時期については、「賃貸借契約書」により判断するケースが大半になります。
「賃貸借契約書」をみると「毎月末日までに翌月分を支払うこととする」などの文言が記載されていることが多くみられますが、これは、家賃の1か月分を「前払い」で支払うことを意味します。
例えば、「5月分を4月末日」に支払った場合には、「4月分の収入」として計上しなければなりませんが、「5月分の収入」として計上してしまうケースが散見されます。
しかし、実務的にはこの原則的な収入の計上基準はあまり利用することがなく、全く知らなかったという人も多いと思います。
実務上よく利用される「例外的な方法」がありますので、下記でみていきましょう。
実務でよく利用されている「例外的な方法」について
「一定の要件」に該当する場合には、その年の「貸付期間に対応する賃貸料の額」をその年分の総収入金額に算入するすることができます。
📝【一定の要件】
- 帳簿書類の継続的な記帳。その記帳に基づいて不動産所得の金額を計算していること。
- すべての家賃収入について、「継続的」にその年の「貸付期間に対応する部分の金額」をその年分の「総収入金額に算入する方法」により所得金額を計算していること。
- 家賃収入にかかる「前受収益」および「未収収益」の経理が行なわれていること。
- その者の1年をこえる期間にかかる賃貸料収入については、その「前受収益または未収収益についての明細書」を確定申告書に添付していること。
「原則的な方法」では、賃貸借契約書の支払日を一つずつ確認しなければならず、家賃の集計などの経理が煩雑に。
一方、「例外的な方法」では、「5月分の家賃は5月に計上」というように、すべての家賃収入の計上を統一化できるので、経理の簡便化につながります。
また、「適正な期間損益計算」の観点からも合理的な方法であるので、実務で最も採用されている方法になります。
税務調査で狙われるポイント
税務調査では、「例外的な方法」を採用している大家さんについて、「一定の要件を満たしているかどうか」をチェックされます。
「一定の要件」のうち、「要件1と2」については当然にやっていることであり、「要件4」についても1年以上の家賃を先払いしているケースはほとんどありませんので、特に問題になることはないです。
一番問題となるのは、「要件3」について。
「前受・未収収益の計上」を忘れている大家さんがとても多いのです。
では、「例外的な方法」が否認され、「原則的な方法」を採用しなければならなくなったとして、何が困るのでしょうか。
例えば、直近の年度について、前受・未収収益の計上を忘れていたため「例外的な方法」が否認された場合。
今年度の「1月分12月支払」の家賃収入の計上が漏れていることになり、「期ズレ」が発生します。
今年度も含めたトータルで見ると収入の金額に変更はありませんが、調査対象年度だけみると1月分の売上を過少に計上していることになるのです。
所得税は「累進課税」であるため、過少になっている金額によっては「税率が高額になる」ことや「過少申告加算税や延滞税などのペナルティ」を支払わなくてはなりません。
税務調査で指摘を受けないよう「前受・未収収益」の計上は忘れないように注意しましょう。
まとめ
家賃収入の原則的な収入の計上時期は、「契約等に定められた支払日」になりますが、一定の要件を条件として例外的な方法も認められています。
「例外的な収入の計上時期」は、貸付期間に対応する期間を収入として計上することことになります。
実務的には、例外的な基準が適用されることが多く、「経理の簡便化」などのメリットがあります。
家賃の収入時期については、税務調査でも狙われやすいポイントですので、「前受・未収収益」の計上を忘れないようにしましょう。