こんにちは。大阪府の寝屋川市で不動産オーナーを支援している税理士の平川(@asse_t_ax)です。
東京オリンピックを目前に全国の不動産価格が上昇していますね。
この機会に不動産を売却してしまおうと考えている方も多いのではないでしょうか。
一般の方にとって、不動産の売却は一生に一度あるかないかの特別なイベントです。
そのため、マンションなどの不動産売却にかかる税金の計算について、なじみが薄い人は多く、また、複雑な制度が数多く設けられているため、マンションの売却で失敗しないためにも、税金について理解を深めておくことは非常に重要です。
今回は、「居住用マンションの売却に関連する税金」について、できるだけわかりやすく解説していきますので、現在お住まいのマンションを売却しようと考えている方は、ぜひご参考ください。
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マンション売却にかかる税金の計算
居住用のマンションを売却した場合の税金の計算は、「売却価額から必要経費」を差引き、「売却益から特別控除3000万円を控除した金額」に対して、「税率」を掛けて、所得税を計算します。
また、土地建物などの不動産を売却した場合には、事業所得や給与所得と分離して計算する「分離課税」により所得税を計算します。
📝【特別控除】
居住用の不動産を売却した場合に認められた税制上の特例であり、3000万円の税額控除が認められる。
必要経費について
売却益を計算するにあたって、マンションの「売却価額から購入時の購入代金」を差引いて売却益を計算すると考えている方がとても多いです。
間違いではないですが、厳密には、売却価額から必要経費を引いた金額が売却益となります。
「必要経費」は、
で求められます。
取得費の範囲について
マンションを購入するにはさまざまな諸経費がかかります。
その中で取得費に算入できるものとして、下記のような費用があげられます。
📝【取得費の範囲】
- 購入代金
- 仲介手数料
- 印紙代
- 登録免許税
- 所有権移転登記、抵当権設定登記に伴う司法書士の報酬
- 不動産取得税
その他にも、購入に際して「立退料を支払った場合」には、取得費に含まれます。
なお、マンションなどの建物は土地と異なり、「時間の経過に伴い価値が減少していくもの」です。
そこで、その「価値の減少分」を取得費に反映する必要があります。
所得税法では、「減価償却」という計算方法を使って、その減少分を算出することとしています。
減価償却の詳細な計算方法については、紙幅の都合上割愛しますが、
〔算式〕
取得費 = 購入に要した金額 - 減価償却費
で取得費を求めることができます。
以下に簡単な例をあげておきます。
〔対象物件〕
・新築で土地3000万、建物2000万(諸経費込み)で購入し、10年後に売却。
・鉄筋コンクリート造
・法定耐用年数 47年
〔算式〕
取得費 = 3000万(土地価額) +2000万(建物価額)-(2000万×10年÷47年)=45,744,681円
住めば住むほど、減価償却費の金額が大きくなっていき、取得費の金額は下がっていくことになりますね。
マンション購入時の契約書を紛失してしまった場合
住んでいたマンションを売却するにあたって、居住期間が20年、30年と長くなってくると「当初購入した時の売買契約書」や「諸経費の領収書等」を失くしてしまうケースも多々見受けられます。
こういったケースでは、購入金額等を税務署に証明する書類がなく、正確な取得費の計算が困難になります。
そのような場合の救済措置として、土地建物の取得費については、「概算取得費控除の特例」という制度があります。
「租税特別措置法」で規定されており、「売却価額の5%相当額」と「実際の取得費」のうち有利な方を選択適用できます。
されど、売却価額の95%が売却益として税金の対象として課税されるのは、大変厳しいですね。
そうならないように、マンションを「購入した時の書類関係」は、1つのファイルにまとめて金庫等で保管するなど、必要な時にすぐ取り出すことができるようにしておきましょう。
譲渡費用の範囲について
「譲渡費用」とは、マンションの「譲渡をするためにかかった費用」のことをいいますが、具体的には、下記の費用などをいいます。
📝【譲渡費用の範囲】
- 登記代
- 司法書士に登記を依頼する費用
- 印紙代
- 仲介手数料
居住用のマンションを譲渡する場合には、通常これらの費用がかかってきます。
「売買価額から取得費および譲渡費用」を差引くことにより、「売却益」を算出することができました。
次は、実際にマンションを売却することによって支払う「税金を算出するための計算方法」について説明していきます。
税金を計算するためのSTEP
STEP1 譲渡所得のグルーピング
譲渡税の金額を求めるにあたっては、算出した売却益をマンション「購入時から売却時までの期間」に応じて、「長期譲渡所得」と「短期譲渡所得」のグループに分ける必要があります。
長期譲渡所得と短期譲渡所得によって、譲渡税の税率が変わってきます。
〔税率〕
長期譲渡所得の税率 = 15%(住民税5%)
短期譲渡所得の税率 = 30%(住民税9%)
なお、「平成25年から平成49年」までは、「復興特別所得税」として基準所得税額の2.1%を所得税とあわせて納付しなければなりません。
STEP2 税金の計算上、特別控除の特例が使えるかどうか確認!
土地建物などの不動産を譲渡した場合には、税金の計算上、「特別控除の特例」を受けることができる場合があります。
現在お住まいのマンションなどのマイホームを売却する際には、税金の特別控除の特例として「3000万円の控除」を受けることが可能です。
その他の税金の特別控除としては、「公共事業などのために収用される場合」に5000万円の特別控除を受けられることや、「特定土地区画整理事業などのために土地を売却した場合」には、2000万円の特別控除の特例を受けられることなどがあります。
「不動産を売却した場合」には、ケースごとに適用可能な特別控除の特例がないかを、必ずチェックしましょう。
STEP3 実際に税金を計算してみましょう
具体的な事例で税金を計算してみましょう。
〔売却物件〕
・構造 RC造の居住用マンション1室
・購入価額 5000万円(建物3,000万円、土地2,000万円)
・所有期間 10年
・売却価額 1億円(建物5,000万円、土地5,000万円)
・売買契約書に貼付する印紙代 6万円
・仲介手数料 300万円
譲渡税の計算にあたり、まずは、取得費を求めていきます。
〔算式〕
(土地) (建物) (建物の減価償却費)
取得費 = 2000万円 +(3000万円 - 3000万円×0.022×10年)
= 43,400千円
譲渡費用については、今回のケースの場合、印紙代6万円と仲介手数料300万円のみになりますので、合わせて306万円になります。
【算式】
(売却価額) (取得費) (譲渡費用)(特別控除額)
譲渡所得 = 100,000千円 -(43,400千円 + 3,060千円)- 3000万円
= 10,340千円
所有期間は10年ですので、所有期間が5年超となり、今回は「長期譲渡所得」に該当します。
譲渡税額 = 10,340千円 × 15% = 1,551,000円
復興特別所得税 = 1,551,000円 × 2.1% = 32,571円
10年を超えて住み続けた人の特典
マイホームに長年住み続けた人には、3000万円の特別控除のほかに、「譲渡税の税率を軽減する特例」が設けられています。
一定の要件を満たすと上記の図のように、「長期譲渡所得のうち6000万円」までは、所得税が10%、住民税が4%の軽減税率が適用されます。
マイホームを売却して譲渡所得が6000万円を超えるようなことは、ほとんどありませんので、10年以上住んだマンションを売却するような場合はたいてい軽減税率により税金を計算することになるかと思います。
📝【一定の要件】
- 譲渡した年の1月1日における所有期間が10年を超えるもの
- 居住用財産であること
- 譲渡先が売主の配偶者その他特別の関係のある者でないこと
- 交換の特例等他の特例の適用を受けていないこと
なお、「4」については、3000万控除などの特別控除の特例との併用適用は可能です。
まとめ
今回は、「居住用マンションを売却した場合の税金の計算」について、解説しました。
居住用の不動産を「買い換える場合の特例」や「交換の特例」など、本記事で紹介したこと以外にも、さまざまな税制上の特例があります。
また、住宅の買換えなどで「3000万円の特別控除」や「買換え特例」を受けた場合には、「住宅ローン控除」を利用できなくなるなどのデメリットもあるので、実際にマンションを売却する際には、税理士等の専門家に必ず相談するようにしましょう。