こんにちは。大阪府の寝屋川市・枚方市を中心に不動産オーナーを支援している税理士の平川(@asse_t_ax)です。
国税庁の統計によると、平成29年の「相続税の申告対象者」が11万2千件、そのうち「税務調査の対象」となったのは12,576件となっており、割合でみると全体の10%が税務調査の対象となっています。
相続税の調査はだいたい2割くらいといわれていましたが、平成27年の税制改正で「基礎控除の引き下げ」があり、申告対象者が以前より2倍近く増えたことが原因です。
※平成26年度の相続税の申告対象者は56,239件
割合が減少したとはいえ、調査対象に含まれる範囲は増えているのが現実。
実際に税務調査に入られる前に、調査では「どんなことが聞かれるのか」、「その意図は何なのか」ということを理解し、対策しておくことは重要です。
今回は、相続税の調査で聞かれる「一般的な質問」やその「目的」について解説します。
亡くなった方(被相続人)について
まず、被相続人の死因や入院などはしていたかなどの経緯から。
また、被相続人が介護を必要としていたならばその経緯についても質問されるでしょう。
これは、被相続人の「財産管理者」が誰だったかを把握することが目的です。
被相続人が入院や介護などで預貯金の出し入れができない状況であれば、他の誰かが預貯金の通帳やカード、印鑑を管理しているはずです。
また、「被相続人の生活費がどれくらい必要だったか」というのを把握することにより、財産管理者が生活費の余剰金をへそくりしていないかなどを確認することができます。
そのようなお金についてわざわざ「贈与契約書」などまいていることはなく、被相続人から財産管理者への贈与を証明するための客観的な資料がありません。
「へそくり」であると認定された場合、被相続人の相続財産として、財産の計上もれを指摘されてしまいます。
相続人について
被相続人だけでなく、「相続人の職業」や「相続人名義の預貯金」などについても調査の対象となります。
目的は、おもに「名義預金」の有無を把握すること。
📝【名義預金とは】
預貯金の名義は家族などの名前になっているが、預貯金を形成している財産は名義人とは別の真の所有者の財産によって形成されている預金。名義を借りているだけの預金。
相続税の税務調査で一番問題となるのは、「名義預金」であるといっても過言ではないです。
配偶者が専業主婦であり、収入がないのであれば、配偶者名義の預貯金はどのようにして形成されたのかということは確実に質問されることになります。
具体的には、「配偶者が勤務していた期間」や「職業」、「親からの相続の有無」、「不動産の売却の有無」など。
相続人のうち「学生がいる場合」にも注意が必要です。
学生である相続人名義の預貯金があれば、お小遣いの金額やアルバイトの給料がどれくらいあったかなどが質問され、「被相続人からの贈与により形成されたものなのか」、「被相続人が子供の名義を借用して形成したものなのか」ということを確認されることになります。
被相続人の趣味について
「被相続人の趣味」を確認する意図として、生活費以外に「被相続人自身がどれくらいお金を使っているのか」を把握するためと推測されます。
高額な絵画や骨とう品の収集や旅行、毎日のように飲み歩いていたなどのお金がかかる趣味がないのであれば、大きめの預金の引き出しがあったときに、配偶者や家族に贈与したものではないかということを疑う材料となります。
つまり、無趣味の被相続人について、生活費が毎月多く引き出されていたり、高額な引出しがあった場合には反論の材料が乏しくなってしまいます。
相続人は、調査で被相続人の趣味について聞かれたときには、「正直に答えない方がいいのではないか」とご自身で判断してしまいがちです。
被相続人が日常生活で、「どれくらいのお金を使っていたか」を証明する重要な事項ですので、かくさず正直に答えるようにしましょう。
香典帳
葬儀が行われている場合には、「香典帳」をみたいといわれることもあります。
香典帳から「葬儀の参列者」を見ることにより、申告書に載っていない金融機関の名前がないかを確認します。
葬儀に参列している金融機関であれば、なにかしら被相続人と取引があることが普通ですので、金融機関の名前があれば預貯金などの調査が行われることになります。
手帳やパソコン
手帳をまめにつけているような被相続人であれば、相続人もしらないような情報(取引銀行や投資の記録など)が隠されているケースも。
また、手帳に書いてある被相続人の「筆跡をチェック」することにより、「預貯金の引き出し時の筆跡」と照合することなども行われます。
パソコンについては、「ウェブブラウザのお気に入り」の内容を要求されるケースがあります。
「お気に入り」には、取引銀行のインターネットバンクや証券会社などが登録されていることが多いため、そこから申告書に計上されていない金融機関などがないかを確認することを目的としています。
とはいえ、税務調査は任意調査であり、手帳やパソコンなどは極めて被相続人のプライベートな部分。承諾できない場合には、きっぱりとその旨を主張しましょう。
まとめ
税務署は相続税の基礎控除の引き下げによる相続税の課税対象者の増加とともに、相続税の税務調査に力をいれてきており、実地調査の件数も年々増えてきています。
また、実地調査ではなく、書面や電話などによる「簡易な接触」も平成29年は11,198件あり、平成28年の8,995件から大幅に増加しています。
今回は、相続税の税務調査で聞かれるポイントとその目的について、一般的な質問について解説してきましたが、これらの内容は相続人が事前に対応できることでもあります。
税務調査のときにあわてるのではなく、相続税の申告をする段階でしっかりと準備をしておきましょう。