こんにちは。大阪府の寝屋川市で不動産オーナーを支援している税理士の平川(@asse_t_ax)です。
不動産所得がある程度大きくなっていくと、課税所得が増大し、所得税の負担が重くのしかかってきます。
そこで「所得の分散」をはかるため、「不動産管理会社」の設立を検討する大家さんは多いのではないでしょうか。
今回は、「節税」としての法人化だけではなく、多方面から「メリット」と「デメリット」を解説します。
メリットについて
(1)社会的な信用が高まる
一般的に、個人事業主よりも会社の方が社会的な信用が高いです。
社会的な信用が高いということは、個人事業主であるよりも金融機関などからの融資が引きやすかったりします。
また、法人化することで、代表取締役(社長)という「肩書き」ができることも嬉しいポイントですね。
(2)事業年度を自分で決定することができる
個人であれば、事業年度は「1月1日から12月31日」までと決まっていますが、法人であれば事業年度を自由に決めることができます。
また、事業年度を「後から変更する」ことも可能です。
(3)倒産防止共済に加入することができる
別名「経営セーフティ共済」と呼ばれるもので、「独立行政法人の中小機構」が運営しています。
掛け金の全額を総額800万円まで損金に計上することができます。
将来の「大規模修繕の備え」として、必ず加入するようにしましょう。
☟倒産防止共済の詳細はこちらをご参考ください
不動産オーナーに「てっぱん」の節税方法!修繕積立金は倒産防止共済で
(4)社会保険への加入が義務付けられる
保険料の金額が増える可能性もあるため、必ずしもメリットとはいえませんが、今後、年金制度が崩壊しない限りは、遺族年金や年金のもらえる金額が増えるため、ここではメリットにあげています。
(5)小規模企業共済に加入できる
「小規模企業共済」は個人事業主や会社の役員が加入することができる退職金制度になります。
退職金の積立ですが、年間最大84万円まで掛けることができ、「全額所得控除できる」、受取時には「退職所得控除の適用を受けることができる」点がメリットになります。
☟小規模企業共済について詳しくはこちらをどうぞ
個人の不動産オーナーは、「小規模企業共済」で節税しよう!
(6)退職金を支給することができる
役員が退職したときは、一定の方法により計算した退職金を支給することができます。
役員退職金は従業員への退職金に比べて「高額な金額を支給」することができ、退職金を受け取る側も「退職所得控除を受ける」ことができるため、給与などと比べて税制上優遇されています。
(7)生命保険などの保険に加入できる
個人で保険に加入した場合に「所得控除を受けることができる金額」は、年間12万円が限度になりますが、法人で役員や家族を被保険者として加入すれば、個人に保険をかけながら全額経費にできるものや半額経費にできるものなどがあります。
(8)赤字を9年間繰り越すことができる
青色申告をしている個人事業主の場合、「発生した赤字」は3年間しか繰り越すことができません。
一方、青色申告をしている法人であれば、この赤字を9年間繰り越すことが可能になります。
(9)土地取得に係る借入金利息を赤字でも全額経費として計上できる
個人事業主で不動産所得が赤字の場合には、土地取得にかかる借入金に対応する利息部分を経費に計上できません。
法人であれば、そのような制限はなく、赤字であっても全額経費として計上することができます。
(10)事業承継が容易になる
不動産を会社所有にしておけば、オーナーが亡くなったとしても、会社の株式の相続のみで済むため、相続登記の必要がありません。
相続登記は、売買などによる所有権移転登記と比べると税率が安いのですが、それでも「不動産価格の0.4%」はかかります。
その他にも、司法書士に依頼した時の報酬などの諸経費も削減できます。
登録免許税の税額表はこちら
また、オーナーが健在のときに、会社の株式を譲渡・贈与するなどして、事前に相続対策を講じることもできます。
☟事業承継税制についてはこちら
不動産賃貸業における「事業承継税制」
(11)減価償却費の計上が任意
個人事業主は、固定資産の減価償却は「強制償却」ですが、法人は「任意償却」になるので、減価償却を事業状況に応じて調整することができ、償却を繰り延べることができます。
【注意】
減価償却費の調整は、銀行の評価面ではよくありません。
また、申告書をみれば調整していることはすぐに分かります。
新たに融資を検討しているケースでは、減価償却費は償却限度額まで計上しておきましょう。
(12)株式の評価額から法人税等相当額を控除できる
会社の株式の評価額を算定する場合に、会社の資産に「含み益」がある場合には、その含み益から法人税等相当額である37%を控除することができます。
(13)消費税還付の可能性も
個人から法人へ建物を譲渡した場合には、建物を取得した法人で消費税の還付を受けることができるケースがあります。
また、個人事業主が消費税の課税事業者であった場合などには、倉庫や駐車場など「課税売上が発生する物件」を「法人に売却」することにより、最長2年間消費税の免除を受けることが可能です。
☟こちらの記事も参考にどうぞ
個人から法人への不動産譲渡により消費税の還付を受けられるのか
デメリットについて
(1)法人の設立費用がかかる
株式会社を新しく設立するには、司法書士の報酬や登録免許税などの諸経費で約25万円から30万円ほどのコストがかかります。
最近、不動産賃貸業などで増えてきている「合同会社」であれば、10万円から15万円のコストで設立することが可能です。
(2)赤字でも税負担が発生する
個人事業主の場合は、不動産所得が赤字であれば、消費税を除き、所得税等の税負担は発生しませんでした。
一方、法人の場合は、「地方税の均等割」を赤字でも支払わなくてはなりません。
「均等割」は、会社をその都道府県(市町村)で運営して行く上での最低限のコストになります。
仮に、寝屋川市を本社とする法人を設立する場合には、大阪府に2万円、寝屋川市に6万円の均等割を毎期支払うことになります。
※資本金を1千万円とします
大阪府の均等割 icon-external-link
寝屋川市の均等割 icon-external-link
(3)不動産を取得するのに不動産取得税などの経費がかかる
不動産取得税は、「不動産の取得時」に、1回だけ支払う税金ですが、とても高額になります。
☟不動産取得税については、こちらをどうぞ
【不動産賃貸業における経費】~個人編~「租税公課」について
(4)税理士への支払いが発生する
個人から法人にすることで、個人事業主と下記のような業務内容の変化があります。
- 役員報酬の設定
- 役所関係への届出書の提出が増える
- 年末調整が必要になる
- 税務申告ソフトが必要になる
- 申告書が複雑
- 税務調査の確率があがる
法人は、役員報酬を「年1回」、取締役会で決定しなければなりません。
また、「報酬額の変更」は、決算後3か月以内に1度しかできないなどの制約がありますので、「事前のシミュレーション」が非常に重要になります。
これらを独力ですべて行うのはとても難しいので、税理士と顧問契約を締結する必要があり、税理士報酬の支払いが発生します。
年間30万~が相場でしょうか。
(5)交際費に上限がある
個人事業主の場合、交際費に上限はありませんが、法人の場合は一定金額しか経費にできなくなってしまいます。
中小法人では、基本的に年間800万円までは経費にできます。
不動産管理会社では、その業務形態上、交際費が800万円を超えることはほとんどないので、そこまでのデメリットとはいえないでしょう。
また、個人よりも法人の方が、「交際費の範囲」が広がりますので、むしろメリットかもしれません。
まとめ
不動産管理会社を設立することによって
- 節税の幅が広がる
- 所得を分散させる
- 事業承継が容易になる
などのメリットがあります。
法人化するかどうかは「所得500万円」が1つの目安になります。
弊所では、法人化のシミュレーションなどを含め初回面談は無料となっておりますので、お気軽にご相談ください。