こんにちは。大阪府の寝屋川市で不動産オーナーを支援している税理士の平川(@asse_t_ax)です。
不動産賃貸業における経費の中で、「修繕費」について理解を深めておくことは非常に重要になります。
今回は、個人の不動産オーナーに向けて、修繕費について解説したいと思います。
資産に計上しなければいけないもの
建物の傷んでいる場所を修繕したり、部屋をリフォームした場合に、その支払った金額を「修繕費」と「資産(資本的支出)」のどちらで処理するべきかは、多くの不動産オーナーが頭を悩ませている問題だと思います。
修繕費として経費に計上できる形式的な判断基準としては、
- かかった修繕代が20万円未満である
- 3年以内などの短い周期で定期的に行われる修繕である
などになります。
また、上記の基準でその費用が修繕費か資本的支出なのか判別できない場合には、
- かかった修繕代が60万円未満である
- 修理した資産の前期末の取得価格の10%未満である
といった基準を満たせば、修繕費として経費にできますが、実務上このような形式的な基準はあまり使用しません。
実務的には、その支払った金額の内容が「原状回復」にあたるのかそれとも「資産価値を高めるもの」かによって、判定することが多いです。
大規模修繕費用は資産に計上しなければならないのか
不動産賃貸業では、修繕費のなかでも「大規模修繕」にかかる金額が一番大きくなります。
そのため、大規模修繕費用が修繕費として経費になるのか、それとも資本的支出として資産に計上しなければならないのかという問題は、不動産賃貸業にとってとても重要な経営判断になります。
修繕費の考え方には、
「修繕」・・・劣化した性能を初期の水準まで引き上げること
「改良」・・・初期の水準以上に性能を高めること
という2通りの概念があり、これら2つをあわせたものを「改修」といいます。
つまり、「修繕」にあたる部分は、単なる原状回復工事であるため「修繕費」。一方、「改良」にあたる部分は建物の価値を増加させるものであり「資本的支出」として取り扱われることになるのです。
一般的に大規模修繕では、修繕と改良が同時並行でおこなわれることになるため、工事の明細などで個別に判断するようにしましょう。
大規模修繕の主な工事内容
大規模修繕の工事には、下記のようなものがあります。
- 仮設工事・・・仮設トイレや現場事務所の設置、足場の設置など
- 躯体補修工事・・・劣化・損傷箇所を特定し、コンクリートのひび割れなどを補修する
- 洗浄・剥離工事・・・外壁・天井の表面に付着した汚れなどを洗浄する
- 外壁補修工事・・・劣化したタイルの交換や外壁の塗装の塗替えなど
- 鉄部の塗装工事・・・玄関扉や格子・てすりなどの鉄部の塗替え
- 防水工事・・・屋上やバルコニー、廊下などの防水工事
- シーリング工事・・・コンクリートの継ぎ目などにあるシーリング材の除去と充填
不動産オーナーは各工事が、単なる原状回復による「修繕」なのか建物の価値を高める「改良」なのかといった視点で、修繕費と資本的支出のどちらに該当することになるのか判断する目を持つようにしましょう。
まとめ
修繕費か資本的支出か。
実務上は、形式での判断基準はあまり利用することはなく、工事ごとに実態をみて判断します。
大規模修繕についても、金額の多寡にかかわらず、工事明細の各項目ごとに修繕費かどうかを判断する必要があります。