こんにちは。大阪府の寝屋川市・枚方市を中心に不動産オーナーを支援している税理士の平川(@asse_t_ax)です。
確定申告を忘れたり、申告期限より遅れてしまうと大きな代償を払うことになります。
期限後申告のペナルティとしては、大きく下記の4つがあげられます。
📝【期限後申告のペナルティ】
- 65万控除が使えない
- 純損失の繰戻還付ができない
- 本税とは別に加算税の支払いが必要
- 青色申告を取消される可能性がある
上記のペナルティの中でも、「65万控除」を利用できないというのは、納税者にとって大きな代償です。
「確定申告を忘れてました・知らなかった」では通らないので、自分の守りを固めるという意味でも、「期限後申告」のリスクを理解しておきましょう。
期限後申告とは
確定申告をするべき人が、申告期限を超えて確定申告することを「期限後申告」といいます。
似たものとして、「修正申告」や「還付申告」がありますが、ここで解説する期限後申告とは異なりますので、混同しないようにしましょう。
- 「修正申告」・・・すでに提出した確定申告書の内容について、税額が過少になっていたため、訂正して申告すること
- 「還付申告」・・・「源泉徴収された所得税」や「予定納税」の金額が本来納める税金よりも多い場合に、納めすぎた税金を取り戻すための申告
確定申告をしばければいけないのかどうか分からない人は、国税庁のサイトを参考にしてみてください。
確定申告が必要な方|税の情報・手続・用紙|国税庁
期限後申告のデメリットを知っておこう
期限後申告のデメリットとしては、すでに述べたとおりですが、具体的にその内容を見ていきましょう。
(1)65万控除が使えない
期限後申告の最大のデメリットでしょう。
「65万控除」とは、個人事業主が「青色申告を選択・申告」することによる特典になりますが、青色申告以外にも以下のような要件があります。
📝【65万控除の適用要件】
- 不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営んでいること。
- 複式簿記により記帳していること。
- 貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付し、この控除の適用を受ける金額を記載すること
- 法定申告期限内に提出すること。
- 発生主義により記帳していること。
「法定申告期限内での提出」が要件となっていますので、期限後申告になると特典が受けられないことになります。
青色申告の特典として、65万円控除のほかに「10万円控除」があります。
これらの控除のことを、「青色申告特別控除」といいますが、どっちを適用するかは、納税者の選択によります。
10万円控除の適用要件としては、65万円控除の適用を受けられない場合となっており、青色申告者であれば期限後申告でも適用を受けることができるのです。
とはいっても、65万控除と10万控除では、55万円もの差額があります。
仮に税率が33%の人であれば、税額にして約18万円。住民税(10%)も加味すると約23万円もの差が。。。
(2)純損失の繰戻還付ができない
「純損失の繰戻還付」はあまり馴染みのない制度なので、そこまで影響はないかもしれません。
純損失の繰戻還付制度が適用できるのは、今年度の確定申告の結果が赤字、前年度が黒字のケース。
今年度の赤字を前年度の黒字と相殺し、前年度の所得税を取り戻すことができるといったものになります。
📝【純損失とは】
不動産所得、事業所得、山林所得、総合譲渡所得から生じた損失の金額
(3)ペナルティがある
期限を守らなければ、当然にペナルティを科されることになります。
ペナルティの種類は、
の2種類。
無申告加算税は、5%~20%。延滞税1%~14.6%の割合で計算されます。
無申告加算税には、免除規定があったりするので、詳しくは国税庁のホームページ「確定申告を忘れたとき」をご参考ください。
なお、ペナルティの計算はとても複雑で面倒ですが、下記のサイトで、簡単に計算することができます。
→最速資産運用「加算税・延滞税の計算」
※Google chromeのブラウザをお使いのユーザーで、上手くサイトが表示されない場合は、Adblock停止後、再度更新してみてください。
(4)青色申告が取消されるかも
期限後申告であるから、即座に青色申告が取消されるということは、まずないでしょう。
この点に関しては、法人と個人で少し扱いが変わってきますので、注意が必要です。
法人の場合は、『法人税法127条1項4号』により、2期以上無申告であったり、期限後が続くと青色申告を取り消す旨が規定されています。
一方、個人の場合、所得税法に上記の規定は存在しません。
個人の青色申告の取消し事項については、「国税庁|事務運営指針|個人の青色申告の承認の取消しについて」で確認することができますが、明らかに法人よりも条件が緩くなっています。
簡単にまとめると、個人の場合は、税務署に逆らったり、サボったり、ダマしたりしたら、青色申告の取消しを検討しますよといったもの。
では、個人であれば期限後申告であっても青色申告が取消されることはないかというと、それも違うでしょう。
期限後や無申告が、特にやむを得ない事情がないにもかかわらず、常態化していれば、青色申告が取消されても文句は言えません。
青色申告が取消されてしまえば、下記の青色申告の特典を受けることができなくなってしまいます。
📝【青色申告の特典】
- 30万円未満の固定資産を一括に経費計上
- 青色申告特別控除
- 赤字の3年間繰越
- 青色専従者給与の支給
青色申告が取消されてしまうと、1年間は再申請ができないため、確定申告は必ず期限内に行うように日ごろから準備しておきましょう。
青色申告については、下記の記事も合わせてどうぞ
→【初心者大家さん向け】不動産オーナーは「事業的規模」で青色申告の特典をフル活用しよう
→不動産賃貸業において『青色専従者給与』を支給する場合の注意点について解説
(5)振替納税を利用できない
期限後申告の場合は、振替納税を利用することができません。
振替納税のメリットとしては、
- 現金を持ち歩く必要がなく、手間がかからない
- 納付期限を約1か月遅らせることができる
などがあります。
期限後申告の場合は、納付書による納付になります。
納付が遅れるにつれ延滞税の金額が大きくなってしまうため、気づいた時から早急に納付するようにしましょう。
期限後申告でもできること
ここまでは、期限後申告のデメリットについて解説してきました。
では、反対に、期限後申告でも期限内申告と同様にできることについてもお伝えしていきたいと思います。
(1)純損失の繰越控除
デメリットの章で、「純損失の繰戻還付」は利用できないことは説明しましたが、これと似て非なるものとして「純損失の繰越控除」は期限後申告でも適用することができます。
「純損失の繰越控除」とは、今年度の赤字を来年度以降3年間繰り越すことができる制度。つまり、今年の赤字を今後3年間発生する黒字と相殺ができることになります。
(2)還付申告
「還付申告」とは、給与などから源泉徴収された所得税を確定申告することにより取り戻すことをいいます。
確定申告をしていない人が「住宅ローン控除」や「医療費控除」などを忘れている場合なども、還付申告で税金を取り戻すことができます。
還付申告は、期限後であっても何の問題もなく、むしろ「還付加算金」という利息のようなものを付けて税務署が返金してくれます。
還付申告の期限は、「申告年度の翌年1月1日から5年間」となっていますので、忘れているひとは、今からでも確定申告をして、納めすぎた税金を取り戻しましょう。
期限後申告に時効はある?
国税の時効については、国税通則法に別段の定めがない限りは、民法の規定が準用されます。
よって、確定申告を長年忘れており、税務署からも何も言われていないような場合には、「時効」が適用されます。
国税の時効は下記の通りです。
上記の期間は、税務署から督促状や催告書が届いた場合には、時効のカウントがリセットされます。
間違っても時効期間が過ぎるのを期待して、確定申告をしないという選択はしないように。。。
まとめ
確定申告を忘れてしまい、期限後申告になると、青色申告特別控除である65万円控除が適用できないなどのデメリットがあることをご理解いただけたと思います。
確定申告が必要な人は、必ず期限内に確定申告することを心がけましょう。
なお、弊所では、期限後申告になってしまった方などのための料金プランなどもございますので、ご不明点等ございましたら、気軽に弊所までお問い合わせください。