こんにちは。大阪府の寝屋川市・枚方市を中心に不動産オーナーを支援している税理士の平川(@asse_t_ax)です。
不動産投資をしていると、お風呂やキッチンなどの水まわりの修繕は、金額が大きくなりがちです。
とくに、古くなったユニットバスやシステムキッチンを丸ごといれかえると、百万単位でお金がかかることも。
ユニットバスとシステムキッチンが古くなったから入れ替えたいんだけど、経費になるの??
大家さん
残念ながら一括で経費にはできません。
ユニットバスやシステムキッチンは、基本的に固定資産として資産計上する必要があります。
ひらかわ
ユニットバスの取替工事を行った場合
ユニットバス
結論として、ユニットバスの取替工事を行った場合、その費用は「資本的支出」として取り扱い、資産に計上しなければなりません。
現在新しく作られている住宅は、ほぼ100%近くがユニットバスを採用。
既存のものでも、8割以上はユニットバスが採用されているのではないでしょうか。
ですが、ユニットバスの一般家庭への普及は昭和40年以降。
築古の戸建やアパートであれば、タイル張りの浴室、いわゆる在来工法の浴室もまだまだ現役で残っていますよね。
タイル張りの浴室は、冬は寒く(そもそもタイルが冷たい)、水漏れやシロアリの発生リスクが高い。
何よりも入居者に人気がなく入居付けに苦労するというデメリットが。。。
ユニットバスへの取替は必須事項です。
在来工法もしくはユニットバスから新たにユニットバスを新設するには多額のコストがかかるので、その費用が「経費として計上できるか否か」は、大家さんにとって気になるところ。
ユニットバスはそれ自体が「建物の一部」と考えられています。
そのため、ユニットバスの交換は、建物の一部分の解体と新設を同時に行ったと考え、建物に対する「資本的支出」に該当することになります。
「資本的支出」というのは、建物の価値を高め、またはその耐久性を増すことになる修繕をいい、税務上「資産計上」しなければなりません。
なお、既存の浴室の「解体費用」は、修繕費として経費に計上できると考えられますので、必ず工事明細を確認しましょう。
ユニットバスの取替工事の耐用年数
ユニットバスの取替工事を行った場合の耐用年数はどうなるでしょうか?
ひらかわ
浴室だから「給排水設備」として15年かな?
でも浴槽部分は「器具備品」として8年で減価償却できるんじゃないですか?
大家さん
上記のように考える大家さんは多いのですが、ユニットバスはあくまでも「建物の一部」と考え、建物から独立した存在ではありません。
ユニットバスを新設するケースでは、工場でパーツを製造し、現場で組み立てることになるので、部材ごとに耐用年数を分けることができないのです。
つまり、取替費用の全額を建物として計上する必要があります。
その場合の「法定耐用年数」は、木造で22年、RCで47年に。
建物の構造によって、ユニットバスの耐用年数に20年以上も差が生じることは、???ですが、過去の裁決例などからみても仕方ありません。
なお、ユニットバスが「給排水設備」に該当するのではないかという点について。
ユニットバス自体が、給水や排水の機能を備えているわけではありません。
あくまでも給水管や排水管とユニットバスを接続してるだけ。
そのため、給排水設備には該当しないことになります。
ユニットバスの部材のみを取替えた場合
ユニットバスを丸ごと入れ替えた場合には、前記の通り修繕費として経費に計上できません。
では、浴槽や浴室の鏡など浴室の「部材のみ」を取り替えた場合はどうでしょうか。
部材の取替については、「部材ごとに個別に資産計上する」か、「修繕費にするかを」判断することになります。
たとえば、ユニットバスには、浴槽のみを取り替えられるものと、できないものがあります。
もし、取り替えられる場合には、浴槽を「器具備品」として資産計上。
金額が30万円未満であれば「少額減価償却資産」として一括で経費に計上することが可能です。
ユニットバスの入れ替えは、「資産計上」。
部材のみの交換は、「個別判断」ということですね。
ひらかわ
システムキッチンの入替えを行った場合
システムキッチン
システムキッチンの場合も、基本的にはユニットバスのケースと似たような取り扱いになります。
システムキッチンは、流し台やコンロ、収納などの各パーツが一体となっており、建物の床や壁と「物理的・機能的」に不可分の関係性にあるのが特徴。
そのため、既存のキッチンを取り壊し、新たにシステムキッチンを設置した場合には、「建物として資産計上」しなければなりません。
なお、既存のキッチンの「解体費用」は、修繕費として経費に計上できるかと。
ユニットバスやシステムキッチンを丸ごと取り替えるとコスト面だけでなく、一括で経費に落とせないため、大家さんは頭を悩ませる問題です。
「賃貸経営の側面」からみると、研磨やカッティングシートなどを利用し、既存の設備をできる限り活用したいですね。
ひらかわ
ブロック型のキッチンの改修工事
流し台やコンロなどがそれぞれ独立している「ブロック型(据置式)のキッチン」もあります。
ブロック型のキッチンや据置式のキッチンであれば、コンロや流し台だけなどパーツごとに交換が可能になります。
このようなケースであれば、パーツごとに修繕費か器具備品、はたまた建物に該当するのかを判断することができます。
まとめ
ユニットバスやシステムキッチンは、建物の構造上、「独立・可分」の要件を満たしていません。
また、建物の機能の面でも、現在の住環境において必要不可欠なものとなっています。
上記のことから総合的に判断して、ユニットバスやシステムキッチンの取替工事は、「建物を新たに取得したもの」として資産計上する必要があります。
浴槽やコンロなど部分的なパーツの取替であれば、一括で経費に計上できる可能性もありますが。
ユニットバスやシステムキッチンの入替工事にかかる取り扱いは、下記の裁決が参考になるでしょう。
本裁決は、「公表裁決」となっているので、実務上も大変参考になる事例のひとつ。
一度目をとおしてみてください。