こんにちは。大阪府の寝屋川市・枚方市を中心に不動産オーナーを支援している税理士の平川(@asse_t_ax)です。
最近は、「築古のボロ戸建投資」や「アパート投資」が不動産投資家のあいだでブームになっています。
特に「築古ボロ戸建投資」は、低リスク・低コストではじめることができるため、会社員の副業として始める人が多い印象です。
かくいう私も「築古戸建て投資」を実践しているひとり。
そんな中、大家さんからよく聞かれる質問のひとつとして。
中古の戸建てやアパートを購入後に行ったリフォーム代は、一括で経費にしても大丈夫ですか?
大家さん
といったことがあります。
屋上防水や外壁塗装工事などは金額もおおきくなり、経費にできるかどうかで、賃貸経営に与える影響は少なくありません。
今回は、「中古物件を購入後、すぐに修繕を行った場合の取り扱い」について解説します。
減価償却資産の取得価額について
本題のまえに。
固定資産(減価償却資産)の「取得価額」は、何から構成されているのでしょうか。
これは、『法人税法施行令第54条1項』で明確に記載されています。
💡【参考条文】法人税法施行令第54条1項
(減価償却資産の取得価額)
第54条 減価償却資産の第48条から第50条まで(減価償却資産の償却の方法)に規定する取得価額は、次の各号に掲げる資産の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
一 購入した減価償却資産
次に掲げる金額の合計額
イ 当該資産の購入の代価(引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税その他当該資産の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)
ロ 当該資産を「事業の用に供するために直接要した費用の額」
「購入代価」とは、物件の購入価格や仲介手数料、固定資産税精算金などが該当。
「購入代価」についてはイメージがつきやすいかと。
「中古物件購入後におこなった修繕費の取扱い」が問題となるのは、「事業の用に供するために直接要した費用の額」という部分。
賃貸物件の事業供用日とは
国税庁のタックスアンサーによると。
📝【事業の用に供した日】
「事業の用に供した日」とは、その減価償却資産のもつ属性に従って本来の目的のために使用を開始するに至った日
と説明されています。
抽象的な表現で少しわかりにくいかもしれませんが、「車」を例に考えてみましょう。
車は、購入した時点ではまだ使用することができません。
購入後、車庫証明を取得し、実際に納品された時点から実際に乗ることができます。
つまり、車であれば「納品日」が事業供用日になります。
また、「新築のマンション」の場合。
建物完成後、入居がない状態でも、入居募集を行っていれば、「入居募集開始日」が事業供用日となります。
結論
結論として、「賃貸物件購入後の修繕費の取扱い」は、ケースバイケースになります。
ここでは、以下で「2つの事例」について検討。
空き家を購入後、リフォームして入居募集を開始した場合
この場合には、修繕内容が明らかに原状回復費用であったとしても、修繕費の全額を「建物の取得価額」に計上する必要があります。
前述の「新築マンション」の例と同様です。
空き家の購入時点では、入居者がおらず、事業供用を開始しているとはいえません。
また、一定の修繕を終えたあとでなければ、賃貸募集もできず。。
つまり、このケースのリフォーム代は、空き家を「事業供用するために必要な費用」となりますので、建物の取得価額を構成することになります。
入居者がいるアパートを購入後、外壁塗装等の修繕を行った場合
購入直後におこなった修繕費は、その内容にかかわらず、すべて「建物の取得価額」にすべきという意見が多くをしめています。
ですが、私自身、上記の意見は法律の「拡張解釈」であって、腑に落ちない部分が。。
たとえば、
入居者がいるアパートや戸建てなどをオーナーチェンジで購入した場合。
家賃が発生する日はいつになるかといえば、物件の「引き渡しがあった日」。
であるならば、物件の「引き渡し日」が事業供用日となるはずです。
引き渡しがあった後に外壁塗装等を実施したのであれば、それは「事業供用日後」の修繕となるのではないでしょうか。
さらに、その修繕内容が原状回復等であるならば、修繕費として一括で経費にすることに問題はないように思います。
とはいえ、この記事の執筆時点では、同様のケースで判例等がないこと。
また、税務署員のなかでも意見がわれているところではあるので、実務上の判断は、慎重に行うべきです。
無難にいくのであれば、賃貸物件購入後1年以内におこなった大規模修繕などはすべて「建物の取得価額」に計上すべきでしょう。
納得はいきませんが。。。
通達や判例等の事例が待たれるところではあります。
まとめ
本記事では、賃貸物件購入後におこなったリフォーム費用が「修繕費になるかどうか」ということについて解説してきました。
たとえば、築古ボロ戸建てを購入し、大幅にリフォーム後、入居付けを開始する場合。
修繕費はその内容にかかわらず、一括で経費にすることができません。
また、オーナーチェンジ物件を購入し、すぐに修繕をした場合。
その修繕を行った日が、「事業供用日前」か「事業供用日後」か。
オーナーチェンジ物件については、意見が分かれるところではありますので、個別に経緯や内容を精査する必要があるでしょう。